コラム

アフターコロナ後の日本社会はどうなる?好調業界と不調業界を考える

  • 業界分析

1. ウィズコロナ時代の日本社会を考える
∟働き方の変化
∟日常生活の変化
2.今後好調だと予想される業界
3.景気が悪くなると予想される業界
4.まとめ

  • ウィズコロナ時代の日本社会を考える

新型コロナウイルスは2019年12月中国で感染症患者が確認されて以降、世界的に爆発的な感染拡大をしています。感染拡大による経済状況の変化は、世界中に大きな影響をもたらし、日本にももれなく大きな影響を与えています。

この感染拡大は2008年にアメリカ合衆国のリーマン・ブラザーズ・ホールディングスの経営破綻を発端として発生した「リーマンショック」と同様もしくはそれ以上の景気低迷をもたらすと言われ、今後の市場動向が世界の注目の的となっています。

 

世界的な景気悪化の心配がされる一方で、日本では多くの企業がテレワーク(在宅勤務)への移行を進め、日本経済において課題とされてきた「長時間労働の是正」「柔軟な働き方がしやすい環境整備」など働き方改革が加速度的に進められてきたという側面もあります。

 

働き方だけではなく、感染症を予防するため「新しい生活様式」として身体的な距離の確保やマスクの着用、こまめな手洗いなどが推奨され日常生活もがらりと雰囲気を変えました。働き方や日常生活で変わったことを改めて考えてみましょう。

 

1-1働き方の変化

新型コロナウイルスの感染拡大を鑑み、多くの日本企業で公共交通機関の混雑を避け出社する「時差出勤」の推奨や在宅でも仕事が可能となる「テレワーク(在宅勤務)」の導入を推進する動きが活発になりました。

テレワーク(在宅勤務)の推奨により、ペーパーレスや印鑑レスなど対面で必要だった事務業務の見直しや、実際にクライアント先に赴かずとも営業が出来るような仕組みづくり、会議の様式がオンラインに変わるなど大きな変化をもたらしました。

テレワーク(在宅勤務)により業務のオンライン化が進む一方で、スムーズな業務遂行のためにネットワークの強化を行ったり、情報セキュリティの重要性が見直されるなど対面で業務を実施していたころにはなかった課題が新たに浮き彫りになりました。新しい働き方に伴いRPAなどで単純作業を自動化する企業が増えたのも大きな特徴でしょう。

 

1-2日常生活の変化

働き方の変化に伴い、日常生活にも大きな変化をもたらした新型コロナウイルスの感染拡大。日常生活にどういった変化があったか考えてみましょう。

まずひとつ目に、外食から中食(テイクアウトしたものや配達されたものを自宅で食べる)・内食(自宅で調理し、自宅で食べる)のシフトがあげられます。働き方変化にも関連しますが在宅勤務の推奨により、今まであった会社の会食やオフィス近辺でランチをするなどの行為が減少したことも変化です。

余暇時間の過ごし方にも大きな変化があったと言えるでしょう、感染拡大しないように外出を控え自宅で過ごす時間が増えたことにより動画配信サービスを活用したりDIYに取り組んだりする方が増加、それにより住宅もマンションから戸建てのニーズが増えているという調査結果もあります。

外出して行うアクティビティから、自宅で過ごすアクティビティへのシフトしていきました。

 

リモートワークに関連する業種

 

2.今後好調だと予想される業界

働き方の変化や、日常生活の変化を見てきました。改めて、今後日本社会において好調だと予想される業界・サービスを見ていきましょう。

  • 新たな働き方を推進するサービス

    • リモートワークに関連する業種

オンライン会議サービスを提供企業やリモートワーク時に必要になるOA機器を生産しているメーカー、ペーパーレス、印鑑レスなどオンラインでの業務推進に関するサービスを提供している業種や企業は今後伸びていくと予想されます。

また簡易業務の自動化(RPA)を導入する企業も増えるため、一部システム会社も好調になるでしょう。

 

  • 情報セキュリティに関する業種

オンラインでの連絡が増える中で、インターネット上のトラフィックも増加します。その中で「情報の保護」の重要性が高まっているため情報セキュリティの分野も今後成長すると予想されます。

 

  • 新たな生活に必要なサービス

    • 飲食・食料品販売業界

中食・内食が増えたことにより、スーパーマーケットや飲食店からのテイクアウトサービスの拡がりを見せています。

スーパーマーケットでは、店内に買い物に出なくても済むようネット注文から配達まで含めたサービスや1食分のパッケージセットのニーズも拡大しています。テイクアウト分野では、いままでテイクアウトサービスを行っていなかった高級店の味をテイクアウト及び配達で楽しめるようになるなど、提供サービスの幅が広がっています。

 

  • 住宅関連業界

リモートワークの増加により、仕事をするための書斎を自宅内に所望するケースが増えたことや通勤回数が少なくなったことにより通勤時間よりも住宅の広さを優先とした住宅選択に移行してきているため住宅関連事業も拡大することが予想されます。

さらに、自宅にて家族で過ごす時間も増えていることもあり余暇時間をどのように過ごすかに重きを置いている意思変化も住宅関連業界が拡大している背景としてあげられます。しかし対面でのサービスが難しくなる中で、オンライン内覧やVRでのショールーム見学など新たな価値提供を求められる実情もあります。

 

  • 動画配信サービス、娯楽関連業界

自宅で過ごす時間が増えたことにより、インターネットを介して提供される動画配信サービスや、在宅で健康維持できるようインターネットでトレーニングができるサービスなどインターネットを介した娯楽・健康促進サービスは今後のニーズ拡大が見込まれています。またゲーム業界も好調です、インターネットを介して行うオンラインゲームのみではなく置き型ゲームと呼ばれる旧来型のゲーム機の売上も好調で在宅時の家族の娯楽として人気を博しています。

 

  • 医療・製薬・衛生関連業界

新型コロナウイルスの感染拡大により一番消費が高くなった分野が衛生関連商品です。マスクや消毒液など、一次は品切れになるほどの売れ行きであったことも記憶に新しいことでしょう、他業種がマスク製造に乗り出すなど現在も市場は活況です。製薬分野では、対新型コロナウイルス向けワクチン開発も進んでいることや新たなウイルスの脅威が社会に大きな影響を与えることが社会的に認知されたことにより今後も成長がみこまれます。また医療機器メーカーも同様に、ECMO(体外式膜型人工肺)など新型コロナウイルスに対応する医療機器の発注が増えるため好調と予測されます。

 

  • カーシェア等個人スペース確保を推進するサービス

公共交通機関での感染を懸念する人も多く、カーシェア等個人での移動手段を求める人が増えています。その中で、駐車場や利用頻度を考えると車両購入まで至らない層においてカーシェアの利用が非常に高い状態が続いています。

また、個人で使えるボックス型のワークスペースの設置も広がっています。在宅勤務が進む中で、様々理由から在宅で仕事が出来ない人向けにサービスの利用拡大増えている背景があり、設置箇所も拡大している現状です。

 

⑤ カーシェア等個人スペース確保を推進するサービス

 

景気が悪くなると想定される業界

新型コロナウイルスの感染拡大により、好調な業界があると同時に逆に現在の社会状況とニーズとミスマッチな業界も出てきています。

 

  • 旅行・観光業界

新型コロナウイルスの感染が全国・世界的に拡大していく中で、人の動きを止めようとする政治的施策もあり今後旅行業界の先行きは厳しいものとなるでしょう。旅行業界の中でも新規事業としてオンライン旅行を企画するなど、他事業に参入するなど工夫をしている企業も出てきているのが実情です。またホテルや旅館など宿泊業も軒並み新型コロナウイルスの影響を受けています。一部では、コワーキングスペースとしてホテルの一室を貸し出すなど一部業態を変えた形で運営している企業も存在します。

 

  • 百貨店・アパレル業界

リモートワークや外出の自粛により、購買活動の低迷が続いています。店頭販売の需要が減ったことや、各種ECサイトの台頭により家にいながら最短で当日や翌日には購入商品を受け取れるようになっていることも大きな要因の一つです。新たな試みとして百貨店のブランド力やディレクション力を活かし地方の名産物などをパッケージ化し通信販売などで取り扱うなどの取り組みも進んでいます。

 

  • 建設業・製造業

中国をはじめとしたアジアからの原材料輸入が滞っている現状や建設の中断などが相次いでいる現状です。そして2020年夏に開催予定であったオリンピック需要を見込んでホテルなどの建設も進んでいましたが、オリンピックの見通しが立っていないことも含め業界として苦境に立たされています。しかし、マンションや戸建など住宅需要は伸びているためすべての建設業で先行きが悪いわけではないという実情があります。

 

  • 教育業界

新型コロナウイルス流行前の業務形態を残しているサービスは今後衰退していくものと予測されます。ICT教育の一環もふくめてタブレット型教材やPCを通じたオンライン型教育にシフトしていける企業が勝ち残っていくでしょう。

 

まとめ

新型コロナウイルスの感染拡大によって、就業環境や暮らし方など大きな変化をもたらした2020年。在宅勤務の推進をベースに、働き方改革が進み伸びた業界やサービスもあれば衰退していく業界やサービスも顕著になりました。

「巣ごもり消費」「リモートワーク(在宅勤務)」など今後の日本社会の経済状況を知るキーワードを出しながら、それに関連する業界・サービス群がそれぞれどういった状況であるかどのように対策をしているのかを取り上げました。

企業を選ぶ観点で考えたときに、自らが培ってきたスキルと業界の将来性のマッチングも非常に大切になってきますので業界やサービスが置かれている外的環境を確認することが大切です。